「ひやっとする薬」松風
「あー、もー疲れた、風丸ぅ~アレ塗ってよ!
あのひやってするやつ」
「はいはい」
部活が終わって、着替える途中、松野は風丸にいつものように筋肉痛に効く薬を塗ってもらうように頼んだ。
最近の特訓はとにかくハードで、次の日筋肉痛になるのは、もはや恒例行事といえた。
なんとなく頼みやすい。
その理由だけで、いつも風丸にお願いしてしまう。
風丸はいやな顔しない。
いいやつだ。
上半身のユニフォームを脱いで、部室のベンチに腰掛けると、背中側に風丸が立つ。
「で、どのへんだ?」
「首とかさ、背中のへんとか……手が届かないとこ塗ってよ。
ひやっとして、気持ちいいんだよね」
「ん、わかった」
筋の沿って、ひやっと気持ちがいい。
「本当にさぁ、サッカー部がこんなにハードだと思わなかったよ」
「ほんとだよなぁ」
風丸は円堂と仲がいいから、忘れそうになるけど、ほぼ同時にスカウトされたんだよな。
ほんの少し前のことのはずなのに、試合だ!練習だ!特訓だ!!と忙しくて、すごく前のことのように思える。
サッカー部に入らなかったら、こうして話すこともなかったかも、と思い、松野は、でろんと、首を後ろにして、風丸の顔をみた。
「ん?なんだよ」
「風丸にもさ、塗ってあげるよー」
「えっ、いいよ」
「まぁまぁ!そういわずに。
いつもやってもらってるんだからさ」
くるっと振り返って、風丸の肩を持つと、入れ替わりにストンと座らせた。
「だから、いいって」
「まぁまぁ。そう言わずに」
するっと薬も奪い取った。
「んで、どこかなぁ~」
松野があまりにものりのりなので、風丸は一つため息をつき、肩をすくめた。
今は何をいっても無駄らしい。
それならば、お言葉に甘えよう。
「首のところとかさ、肩とかお願いできるか?」
「はいはーい」
風丸は、さっと汗で貼りつく髪をかきあげた。
白いうなじにうっすらと汗が浮かんでいる。
それを目の前にして、松野はよーしっと意気込んだ手を止めた。
「風丸」
「ん?」
「なんか、エロいんだけど」
「はぁ?」
怪訝な顔で聞き返す。
「だーかーら!
なんか、エロいんだけど!!」
予想したよりも声が大きくなり、部室内の全員の視線が二人に集まる。
なんの話だ?ときかれて、話し出そうとする松野の口を風丸は慌てて押さえた。
「お前なぁ」
「あはは、ごめん、ごめん。
だって、本当にそう思ったからさぁ」
全然嬉しくないとか、意味がわからないとか、ぶつぶつ言う風丸をなだめもう一度座らせると、作業に戻る。
ぬりぬりしながらも、やっぱり、なんかエロいなぁという気持ちが消せない。
うーん、なんでかな。
なんで、そう思うのかな?
すーっと、塗ったところに、ふっと息を吹きかけてみた。
「ひゃぁ」
ひやっこさ倍増である。
「マックス!!!
お前!!!」
「あはは、ごめん」
勢いよく振り返った風丸と目があった。
「あっ、真っ赤」
「誰のせいだと思ってるんだよ!!」
突っかかってきそうな、風丸をまぁまぁと抑える。
「だから、ごめんって言ってるじゃん。
そんなに怒んないでよ」
「もう、絶対に頼まない!」
「僕は明日も頼むけど」
「しるかっ!」
怒る風丸を尻目に、松野はやっぱりなんかエロかったなぁと思ってた。
みんな気づいてるのかなぁ。
さっき塗られた薬が妙に染みているようで、なんとなくひやっとした。
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リクいただいたので、書いてみた!
初期メンのガチャガチャした感じがスキ…!